遺言書を作った方が良いのか?あるいは、遺言書を作ることでどのようなメリットがあるのか?と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
上記の点について見ていきたいと思います。
■遺言書が無い場合どのようなリスクがあるのか?
・相続人間のトラブル
遺言書が無い場合、相続人の間で協議(遺産分割協議)もしくは、法定相続分に従って遺産が分配されます。しかし、全ての相続人の利益や期待のとおりに話が進み、合意するとは限りません。これにより遺産の分配をめぐって家族間の対立が生じる可能性があります。
・相続財産の不適切な分配
例えば、遺言者が特定の相続人に多くの財産を残したいと思っていた場合、遺言書がなければその意思が実現されない可能性があります。
・遺産相続が進まない
遺言書が無い場合、相続人の間で遺産分割協議を行ってどの様に財産を分配するかを決めていくことになりますが、もし、相続人の一部が認知症、未成年、連絡が付かずに行方不明といった状況になっていると様々な手続きが必要になるため、スムーズに相続手続きを行うことが困難になります。
■遺言書を作成した方が良い人
以下のケーズに当てはまる方は、相続人間のトラブルの回避、自分の意思に沿った相続の実現のためにも遺言書の作成をおすすめします。
①相続人同士の仲が良くない
遺言書により、財産の配分を指定することで、相続人間での財産の配分をめぐる争いが起こる可能性が軽減できます。
②法定相続人以外に財産を残したい
遺言書を作成することで、お世話になった人、友人、慈善団体など法定相続人以外の人々に遺産を残すことも可能です。
③夫婦に子供がいない
子供がいる場合には、全ての財産は残された配偶者(夫または妻)と子供が相続しますが、子供がいない場合には残された配偶者と亡くなった配偶者の親、兄弟が相続人になります。この場合、義理の親、兄弟と交流がない、関係が悪い場合に遺産分割協議がまとまらない恐れがあります。そういった場合に備えて、残された配偶者に全ての財産を相続させる旨を遺言書に記します。
④相続人に障がいや認知症の方がいる
遺言が無い場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになりますが、障がいや認知症により判断能力のない方は遺産分割協議に参加することができません。そうなると、遺産分割協議を行うためには、この相続人に代わって遺産分割協議に参加する人(成年後見人)を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。
⑤相続人に行方不明・生死不明の方がいる
相続人に障がいや認知症の方がいる場合と同様に、相続人全員が遺産分割協議に参加できる状態ではないため、裁判所に失踪宣告の手続きを行わなければなりません。こういった事態を避けるためにも遺言書を作成しておくことが有効です。
⑥相続人がいない
相続人が全くいない方が亡くなった場合、その方の遺産は国が取得することになります。国に財産が帰属することを避け、相続人ではない親族、お世話になった人、慈善団体に財産を相続することを希望する場合には、その意思を遺言書に残しておく必要があります。
⑦離婚した相手との間に子供がいる
例えば、離婚した相手との間に子供がおり、再婚した相手との間にも子供がいるという場合、離婚した相手との子供も相続人になります。再婚した相手との子供のみ財産を相続したい、あるいは多めに相続したいという意思を遺言書に記載します。
⑧不動産を所有している
同居している相続人が問題なく家に住み続けられるようにしたり、明確に所有者をすることで不動産の持ち分が分散することを回避したりするためにも遺言書を作成しておくことが有効です。
⑨内縁の妻(夫)がいる
内縁関係(事実婚)の相手には相続権はありません。内縁関係の相手に財産を相続したい場合にはその旨を書いた遺言書を作成しておく必要があります。
⑩相続人が大勢いる
遺産分割協議に参加する相続人が大勢いると、話し合いの機会を作ったり、相続人全員の意見や希望をまとめることが困難になります。遺言書で予め遺産相続の方針を決めておくことで、円滑に相続手続きを進めることができます。
⑪会社経営者や個人事業を営んでいる
事業の継承者がスムーズに必要な財産を相続し、事業を継続するためには、遺言書を作成することにより、相続人間の財産をめぐる争いを未然に防止する必要があります。
⑫農業を営んでいる
農地や農業機械などの農業に関連する財産が複数の相続人に分散して継続が困難にならないよう、農業の継承者に財産を相続する旨を書いた遺言書が有効です。
⑬自身の意思で残す財産の配分を決めたい
遺言書が無い場合、遺産の配分は相続人間の遺産分割協議あるいは、法定相続分により決定しますが、自身で予め自身の意思で残す財産の配分を決めておきたい場合には遺言書にその意思を書いた遺言書を作成しておくことが有効です。
ここまで、遺言書を作成した方が良い様々なケースを取り上げてきました。
遺言書を作成することにより、亡くなった後の相続手続きがスムーズに進んだり、遺産相続に関するトラブルを未然に防止したり、生前の意思に沿った相続が実現できたりするなどのメリットがあります。
遺言書は法律で定められた形式、記載内容を満たしていない場合、せっかく作成しても無効となってしまう恐れがありますので、遺言書を作成したいとお考えの場合は、行政書士、司法書士、弁護士等の専門家に相談してみましょう。